目覚め

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「ございます」  スライムはごぼごぼと答え、するすると床を這って移動した。  にゅるりと身体の一部を伸ばし、触手をつくる。  その触手に手鏡を掴んで戻ってくる。 「どうぞ……」  差し出された鏡を受け取りのぞきこむ。  そこに映し出されたのはたしかにじぶんの顔だ。  ふっくらとした頬。白い肌。それに燃えるような赤い髪の毛。のぞきこむじぶんの目は、びっくりするくらいおおきく、赤い髪の毛とは対照的なあざやかなブルーであった。  これがじぶんの顔か……。  しばらくルーナはじぶんの顔に見とれていた。  はっ、と顔をあげスライムを見る。 「ね、あたしどのくらいここで眠っていたの?」 「十五年くらいになりましょうか……赤ん坊のあなたはずっとあそこの」  と、触手をつかってプールを示した。 「浴槽で眠っておられました。あの浴槽の溶液はあなたさまの揺りかごであり、養育槽でもあります。あなたはあそこで眠りながら成長なさったのです」 「あたしはまだ目覚めるべきではなかった。なぜなの? どうしてそのときでないことが、わたしにはわかるのかしら? いったいわたしは……」  絶句する。  答えはない。  その答えを知る方法は……。  そうだ、自分はどこかへ行き、だれかに会わなくてはならない。  その相手は、運命のひと!  そう、自分は自分の運命を知るために旅立たねばならないのだ!
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