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「あたし、外へ出たいの」
ざわざわとスライムの触手がなびいている。その体色が、めまぐるしく変化する。緑、青、紫となにか迷っているようだ。
「判りました……あなたさまが目覚めたとき、用意していた品がございます」
こちらへ、とスライムはルーナを案内した。
くねくねとつづく洞窟を移動し、スライムは触手に灯りの蝋燭を掴んで先導した。あとをついていくルーナは物珍しそうにあたりを見回している。
洞窟は意外と清潔で、床は歩きやすいように平坦になっている。
ルーナは足の裏で、洞窟が上へ向かっているのを感じた。スライムがかかげた明かりに、洞窟の先が二手に分かれているのを目にする。右側の方向へ歩き出そうとするルーナを、スライムはそっと触手を伸ばして止めた。
「そちらではありません。こちらへ……」
「こっちにはなにがあるの?」
スライムは無言だった。ルーナはちょっと眉をひそめた。なんだか秘密めかしている。決然とルーナは禁じられた方向へ歩き出した。スライムはぶるぶると震えた。
「い……いけません! そちらは……」
「そちらは? なにがあるというの?」
ふたたびスライムは黙り込んでしまった。頭をぐいと上げ、ルーナは歩き出した。なにがあろうと、絶対に確かめてみるつもりだった。ふりむくとスライムはぶるぶると震えたまま、立ち止まってルーナを見送っている。
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