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洞窟の奥は暗かった。
歩くと、下り坂になっていて、ルーナの足ははやまった。
どのくらい下ったろうか、空気がやがてひやりとしたものに変わっていた。
ぞくぞくとルーナの背筋に寒気がはいのぼる。裸でいることを強く意識する。
なんだろう、なにがあるというのだろう?
次第に彼女の足取りは遅くなる。じりじりと小刻みに足を動かし、用心深く進む。
──来てはいけない!
──帰れ!
いきなり、ルーナの頭の中でこのような命令が聞こえてきた。耳に聞こえる声ではなく、心の中に直接ひびく強い命令がルーナの足をとどめた。
「だれ? だれなの、あたしに命令するのは?」
ルーナは闇に向かって叫んだ。頭髪がちりちりと逆立つ感触がして、恐ろしさにルーナは震えていたが、それでも正体を知ろうという欲求に踏みとどまっていた。
──帰れ!
ふたたび、さらに強い命令がルーナを揺り動かした。それは厳然たる衝動で、ルーナはもはやそれに抗することは不可能になったことを悟っていた。
くるりとふりむき、走り出す。
──帰れ、帰るのだ!
──二度とここに足を踏み入れてはならぬ!
その声に、ルーナは両手で耳をふさいでいた。
わあわあと恐怖に喚きつつ、ルーナは入り口に戻っていた。
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