27人が本棚に入れています
本棚に追加
/65ページ
昨日と同じに部屋に鍵をかけカーテンを閉め、握りしめていた毛むくじゃらをそのまま揺さぶった。
馬鹿なのほんとにあんた馬鹿なのと繰り返してるうちに、やっぱりこいつはわたしのほうなどいつもどおりみていないことに気がついた。
はじめて触れた毛むくじゃらの毛は見た目通りごわごわとしてスチールウールのようだった。
自分がぼろぼろと涙をこぼしていることにも鼻水も盛大に垂れっぱなしなことにも気がついた。
おまえなんかもうそのまま毛むくじゃらでいい。
力いっぱい鼻をかんで、そのままベッドに倒れこんで眠ってしまった。
「--っ!?」
目が覚めると視界いっぱいが黒と茶のさび模様だった。
また目の前で毛むくじゃらが転がっているのかと思ったら違った。
私の背丈と同じくらいなってしまった毛むくじゃらが、枕元に座り込んでいたせいだった。
私以外の人間には見えないとわかっていても、これほどの図体で今までと同じように周りをうろうろされると落ち着かない。しかも手の届く範囲にいる異形を、道路わきになる実をもぐかのように次々と無造作に食っていった。
これがあのコロッケのかけらを高々ともちあげて走っていたやつなのかと思うと信じられない。
なのに怖くはないのだ。
最初のコメントを投稿しよう!