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手の甲なんて、そんなところゴミとるように手を伸ばせない。
いつもよりもちょっと嫌な感じが強い気がするのに。
「平木さん? どうです?」
「あ、はい」
「ああ、よかった。じゃあ明日の夜どうですか」
いそぎんちゃくに気をとられてるうちにいつのまにか行くことになってしまった。
加藤さんはまた不愉快になるんじゃないだろうか。
……西沢さんは私が思ってるよりもずっとさわやかじゃなかったりするんじゃないだろうか。
私は高校を卒業してすぐにこの仕事についた。
高校でも職場でも家との往復で、あまり男の人とでかけたことなんてない。
そもそも誰かとでかけたことすら数えるほどで。その手のことに疎いといってもいいのだと思う。
それともたいしたことでもないんだろうか。多分そんなことはない。
明日は加藤さん出勤してくるだろうか。
そんなようなことを帰り道にぐるぐる考えていて、風景がすこしいつもと違うことに気がついたのは駅に着く直前だった。
いつも中央分離帯で座り込んでる切り株はじりじりと車道にはみだしていっている。
あいつ、動けたんだ。
小石を積み上げているやつが抱えるだけ小石を抱えてどこかへ走ろうとしてる。
そこまで気付いて、背筋が硬くなった。
多分何かがいる。
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