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なのに、いつも座るベンチの向こうの植え込みが、風の吹く向きとは違う方向にざわめいている。
いるのは、一つ目だけじゃ、ない。
波打つわかめ頭が見え隠れするそのそばを小走りに抜け、
公園の出口に向かい、
カーブミラーを見上げ、
カーブミラーには公園の入り口を幅いっぱいにふさぐ黒い小山のようなものが映っていた。
街灯が緑色の濃淡をまだらに照らしている。
ところどころに突き出した枝は髪の毛みたいになびいていて、少しずつこちらに移動しているのがわかった。
背筋だけではなく、喉まで強張って悲鳴すらあげられない。
足も動かなくなって、ただカーブミラーを見つめたまま立ちすくんだ。
よく見ると小山は液体状なのか前に進むたびにその高さを変えている。ずるり、ずるりと音が聞こえてくるような気がした。
私と小山のいる場所の直線上を一つ目が差し掛かった。いつもベンチに寄ってくるときと同じペースで横切ろうとして。
そのまま小山に飲み込まれていった。
全力で走ったのなんて高校での体育の授業以来だった。
一つ目が飲み込まれた瞬間、走り出していた。あんなやつ、みたことがない。
いや、争っているやつらは確かにみたことがある。
多分殺しあっているのだろうなという光景もみたことはある。
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