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いや、最近毛むくじゃらに小さいやつらを食べさせてしまったりしていたし、食いあうように争う異形たちはいた。でもあれは違った。そんなのじゃない。吸収とか同化というのが近い姿だった。
地下にいた小さなものたちもあいつに飲み込まれてしまったのかもしれない。今朝も見かけなかった。
窓口の忙しい午前中はまだましだったけれど、昼をすぎてからは少し頭が痛くなってきていた。昨日ほとんど眠れなかったせいだ。足元が頼りなくふらつく感じのまま、帰り道を急いだ。
もう陽が落ちるのが一日一日早くなってきていて、どんなに急いでも家のそばの駅に着いた時には真っ暗だった。
大丈夫。公園は通らない。
入り口にはいらず、公園の中も見ないように遠回りするつもりだった。
それなのに、毛むくじゃらが不意にかばんから飛び降りて公園に入っていってしまった。
放っておけばいい。
そう思った。そうするべきだと思った。だってあいつはいつだってちゃんといつの間にか戻ってきてたし。前よりもずっと大きくなってきてるし。
そう思いながらも、公園に足を踏み入れてしまった。
「不審者に注意」の看板があったはずのあたり。
看板が全く見えないのは小山が前に立ちふさがっているからだと、気がつくまでに一瞬かかって、毛むくじゃらがまっすぐそちらに進んでいく姿が何を意味するのか気がつくのにもうちょっとかかった。
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