三月三十一日のこと

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「それは男同士の約束だから話せねぇ、な?」  がしっと肩を叩かれて曖昧に同意した光が、顔色を悪くさせていたので、結局それ以上の追及はできず、美里が「そういえば……」と切り出した昔の担任の先生の話題に、方向転換していった。  光と圭介は揃って草太の家へ、麻衣と私は美里の家に泊まることになった。  女同士で枕を並べ、あえて光の記憶のことを避けるような話をした後、もう寝ようかと電気を消した時に、麻衣が遠慮がちに切り出してきた。 「遥はさ、光のことが好きだったの?」  私は一度顔を枕にうずめてから、それに答えた。 「うん。……でも、そうかなって思ったのは光が引っ越す時になってから。それまでは女の子の友達と同じような括りにしちゃってたらか……」  十年近く前の淡い初恋話は、もう時効だと思う。  だから私は、そこから宙ぶらりんのまま、新しい恋もせずに十九歳を終えようとしているなんて、二人にはとても言えなかった。    
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