四月一日のこと

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四月一日のこと

 四月一日。春の訪れが早い今年は、山の中腹にある大桜は満開になっていた。  草太と圭介が率先して、タイムカプセルが埋められているはずの場所を掘っていく。  子供の頃、半日かけて皆で苦労して掘って埋めた記憶があるが、二十歳の青年二人にかかればあっという間の作業になった。  土の下から姿をみせたのは、錆びて汚れた一斗缶。中にはビニール袋でくるまれた小箱が六つ。それぞれ拙い文字で、名前が書いてある。 「中身は無事みたいだな」  真っ先に手に取って確認した草太が言った。  私達もそれぞれ自分の名前の書かれた箱を手にとって、箱を開けていく。  草太の箱の中身には、当時男の子の間で流行っていたカードゲームが入っていた。「きっとプレミアがついているはず」というメッセージを添えて。  圭太のものは、男だけで何やら盛り上がっていたので、ろくでもないものだとわかる。  麻衣と美里、そして私は、修学旅行の時にお揃いで買ったキーホルダーと、未来の自分にあてた手紙が入っていた。 「やだ、手紙なんて書いた? 覚えてないや。恥ずかしくて読めない!」  美里の言葉に、麻衣も私も頷いた。何を書いたのか覚えていないし、当時の自分の幼さと向き合うようで恥ずかしかった。  そして光は……。
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