四月一日のこと

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「光?」  箱を控えめに開けたまま、また固まっていた。   「光は、何入ってたんだよ?」  草太が横から覗こうとすると、慌ててぱたんと蓋を閉じてしまう。 「いや、これは、ちょっとマズイやつだった……」  口元を手で覆いながら、顔を青ではなく赤くしていたので、圭介はしたり顔でニヤついてからかいはじめる。 「やっぱりお前もエロいやつか。意外にむっつりだったんだな」  童心に返ったようにはしゃぐ草太と圭介に、あきれた麻衣が用意していた缶ビールを、こっそりと振って渡していった。  記念すべき二十歳の誕生日。約束通り、桜の木の下でのお花見が始まった。  せっかく六人が揃ったのに、それは思い描いていた未来と違う光景に見えた。私は笑っていて、光も笑っている。でも私と光は、笑いあうことがない。それがどうしようもなく悔しかった。  自分だけ置き去りにされたような気分をごまかすように、私はお酒に口をつけた。ほんわりとほろ酔いになっていたからか、意識して彼の方を見ないようにしていたせいか、その時、光がずっと私を見つめていたことに気付かなかった。  十一歳の夏の私からの手紙には、麻衣と美里、そして光と今でも友達でいますか? と書かれていた。  当時の私は光のことを、確かに友人だと思っていた。  他の幼馴染みと違う感情を持っていると自覚したのは、彼が再び東京に戻ると知った日のことだ。  タイムカプセルは、私の記憶をより鮮明に蘇らせた。  お酒の後味と似ている、ほんの少しの苦味と共に。
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