三月三十一日のこと

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 列車がホームに着いた。  三両編成の電車から降り立ったのは三人。私と、中年の女の人と、背の高い男の人。男の人は大きな荷物を持って、しわのない高そうなトレンチコートを着ていたので、地元の人間ではないような気がして無意識に目がいった。特に観光で潤っているわけでもない小さな町に、わざわざ訪れる外の人間は少ない。  ホームは登りと下りあわせて一つしかないから、皆そのまま目の前の改札出口へ向かう。  中学の時は駅員さんが切符を切っていた改札も、さすがに今は自動になっていたけれど、それ以外はあまり変わらない駅。  小さなロータリーの向こうは、二十四時間営業ではない、昔は酒屋だったコンビニと、理容室、花屋などのいくつかの商店が並んでいる。  私の目的地は、この駅から車を山の方に二十分ほど走らせた地区にある。     美里が電車の時刻に合わせて、車で迎えに来てくれると言っていたけれど、まだ車寄せにはそれらしき車は停車していなかった。  時間ができてしまったので、思い立ちバッグから愛用の一眼レフカメラを取り出すと、駅舎にレンズを向けシャッターをきった。     
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