三月三十一日のこと

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「ええっ、折角だし誰かの家に泊めてもらいなよ。着いたらすぐみんなに連絡するから。夕飯もね、みんなで食べよう。まぁ、店は『やまだ屋』くらいしかないんだけど」 「ああ、『やまだ屋』ね。いいね、行きたかったんだ」  車中の前方は、和気あいあいと会話が弾んでいる。「やまだ屋」は近所にあるお好み焼きの店だ。私だって、ネギがたっぷりと乗った特製ミックスを食べるのを楽しみにしてる。なのに、疎外感が増すばかりで、手持ち無沙汰の私は膝に乗せたカメラを無意味にいじったりして、時間をやり過ごしていた。 「遥は、まだカメラ好きなんだね」  不貞腐れ気味の私に気遣ったのか、美里がミラー越しに話題を振ってきた。 「昔からよくお父さんのお古のカメラで写真撮ってくれたじゃない?」  美里の言うとおりで、私はカメラマンの父の影響で子供の頃から写真が大好きだ。  せっかくの美里の気遣いを台無しにしないように、私も大学で写真部に入っていることなど、近況をぽつりぽつりと話しはじめた。すると突然黙って聞いていた光が、何かを思いついたような呟きをもらした。 「そっか……」  このタイミングで、妙に納得したような口ぶりだったから、私は思わず期待して聞いてしまった。 「思い出したの?」 「えっ…………あ、なんとなく?」     
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