なんで光がそんなことを言い出したのかわからなかったけど、私は光の良いところをたくさん伝えた。意地悪を言わないし。乱暴じゃない。女の子みたいに可愛いところも好き。そう言うと、光は口を尖らせてしまう。実は、いつも穏やかな光は「女の子みたい」「可愛い」と言われるときだけ怒る。怒った光も好きだった。どういう種類の「好き」かは深く考えていなかったけれど。
「ねぇハルちゃん。僕もしかしたら、東京に戻るかもしれない」
「え?」
「またみんなで一緒に暮らそうかって父さんと母さんが……」
「光は嬉しい?」
光が嬉しいなら、私も受け入れるしかない。どちらにしても、こういうのは「大人の事情」というやつで、子供が騒いでもどうにかなることではないと、なんとなく理解していた。
「兄ちゃんに会えるのは嬉しいけど、みんなと……ハルちゃんと会えなくなるのは嫌だな……」
光はむくりと起き上がって、私の手を握ってきた。私はこの時この瞬間はまだ、光が甘えて可愛いくらいにしか思っていなかった。何か違うと思ったのは、光の長いまつ毛がありえないくらい至近距離にあると気付いた時で、自分の唇に別の柔らかいものが重なった事実を頭が理解したのは、すでにその温もりが離れた後のことだった。
「僕、絶対男らしくなって帰って来るから、忘れないでね」
そう言った光の顔が急にちゃんと「男らしく」見えてきて、私は狼狽えた。結局二人で顔を真っ赤にして、そのあとは目を合わせることもできなくなり、先に光がベッドに潜り込んで隠れてしまった。
「また鼻血でちゃうかも……」
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