第二章 ~帝都アルノルフ大魔術学校~

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そして、僕はそのまま大講義室へと案内されていた。 どうやら、受験生の待機室というのはここらしい。 入ると同時に、見知った視線を感じた。 興味を持った視線、全く興味の無い視線、嘲笑う視線…。 さっきと違うとすれば、畏怖を感じる視線だろうか。特に近接戦闘の試験で見た顔に、その傾向は多かった。 …―そう。この目だ。 心の中で、何かがチクリと動いた気がした。 記憶には無い、深層心理に基づく何かなのだろうか…分からない。 でもそれは、試験をやり過ぎてしまったという後悔の念にほんの少しだけ、拍車をかける結果にはなっていた。 そんな想いのまま、僕は人気(ひとけ)の少ない端の机に腰掛けた。 「…何暗い顔してるのかしら?」 「そうだぜ!試験結果を認められて、特例の途中参加を決めた天才(・・)に見えないぞ!」 そんな想いを打ち砕く存在、それがそこにはあった。 様々な視線の中で、それを者ともしない二人が、暗い気持ちを打ち砕く。 そこには優しさを感じていた。 僕はその言葉に対して、無意識に言葉に出していた。 「ありがとう…」と。 その言葉で、なんとなくだけど畏怖の視線が和らいだ気がした。 そう、皆心配してただけだ。 僕の強さが皆に向けられないかと言うことを。 僕はその友人(・・)に感謝の言葉しか思い付かなかった。
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