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僕は心底、下らないと感じていた。
ここまで来ると、新人いびりとなんら変わりない。
ただの虐めだ。
既に面倒になった僕は、この人たちを無視して突き進むことにした。そう、僕にはこんな壁、どうってことはない。
僕は何も言わずに、音もなく前に歩き出す。
「なっ、どこに行こうとして…」
その瞬間、足に軽く強化魔法を展開する。
遅くなった世界で、僕は彼女らが立っている隙間を縫うように潜り抜ける。
思考加速もしているので、彼女らの目線が僕の動きを追えてないのは明確に理解できた。
そして最後。強化魔法を全身から解き、音もなく立ち去る。
「…え。ええっ!?どこに行ったのよ!犯罪者!…あ、いた!」
立ち去る僕を遠目で発見したようだ。
実に面倒な見つかり方だよね、これ。
「犯罪者の貴女には、この冒険者ランク3の私が鉄槌を下します。
´火よ焔よ熱き心よ!ここに在りし罪、ここに討ち滅ぼさん。断罪の火焔!!´」
構えてもいない僕に向かって、彼女の全力と思われる炎が放たれた。
予想以上に迫力のあるその魔法は、僕を狙って…あれ…逸れてない?
唐突に気が付いた。
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