第1章

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 西の空は美しいオレンジのグラデーションを演出している。  でも私は今、夕焼けを見ている余裕なんてない。  大好きな彼に気持ちを伝えようとしてるから――。  放課後の校庭。その片隅で、彼の部活が終わるのを待っていた。  私の隣に立つ桜は、私の気持ちなどどこ吹く風。悠々(ゆうゆう)(そび)え立っている。風に吹かれて舞い散る桜の花びらが、ヒラヒラと私の鼻をくすぐった。  思い返せば、君に出逢ってからちょうど一年が過ぎた。数ある高校の中で、同じ学校の、同じクラスになれた奇跡。偶然。  君の笑顔に癒され、共に笑い、時に喧嘩もしたけれど、ずっと一緒に居たいと願った。  そう。来年も再来年も、十年後も、ずっと。  友達なんかで終わりたくない。 「待たせて悪いな。話があるんだよな? 何だった?」  何も知らない彼は、いつもの調子で聞いてくる。 「うん。あの……」  ヤバい。いざとなると言葉が出てこないよ。 「ん?」  首を傾げる彼。  その時、南から暖かい風が吹いた。 「私、貴方の事が大好きです」  優しい南風に乗せて、私は想いを告げた。
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