誕生日前日、まさかの妄想が確信に変わる

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誕生日前日、まさかの妄想が確信に変わる

「アカン、やっぱり真犯人は‥‥」  朝の散歩で、満開の桜のアーチを通る。  先日、ひょんな事から知り合ったメルヘンな子の結婚式に行ってきた。  明日は僕の誕生日で、例年ならば心友と見上げる満開の桜を一人寂しく見上げると、そんな言葉。  心友とは、拠ん所無い事情で距離を取られている。  桜の幹にもたれながら思索に耽る。  我ながら絵になる光景。  去年、詐欺に遭った。  最初は編集者をしている親戚が居るという恩人でもある先輩の紹介で、編集者さんとメールのやりとりが始まった。  まずは原稿用紙30枚分にまとめた[あらすじ]。  僕の作品は期待できるとの事で出版に向けて全文を送ってほしいという好感触。  いくつかの修正点を指摘され、修正すると、いきなり[印刷に回す]という話が出てきて不審に思った。  更に不審に思っていたのが社名を隠している事。  その作品は未完結状態、イラストレーターも決まってない。  ひとまず、急いで完結に繋げた。  当然、荒削りなので指導があるものと思っていた。  すると、先輩が3万円振り込んだので、先輩にお金を払って下さいという急展開。  そもそも、お金がかかるという話すら聞いておらず、僕が関与する余地もなく、自費出版詐欺に遭った。  請求が僕に来ていれば、詐欺だと見破って、この話は終わってた。  先輩に請求を回した事が狡猾だと思った。  早速、先輩が、お金を払ってくれと家にやってきた。  当日の話やったし「キャンセルして下さい」と頼むが、「もう印刷が回っているからキャンセルはできん。3万のうち、2万は借金したから、今すぐ返してほしい」との事。  絶対詐欺や。  しかし、先輩は善意で振り込んでもうた。  ここで「なんで僕に相談してくれんかったんですか? これは詐欺です、お金は払えません」と言うべき所。  先輩は、金にルーズで金の無心に来る事が何度かあった。  しかも、訳の分からない些細な事でキレるため、言葉は慎重に選ぶ必要がある。  小3から煙草を吸い始め、少年院、社会人になってからも実刑を受けて、 「警察なんか怖ない」と豪語。  真相は不明やけど先輩の武勇伝。  普段は面倒見の良い兄貴肌。  僕は先輩の男気に惚れ、心酔しとった。  手持ちに2万の余裕はあった。  詐欺と決めつけるのは早い。  編集者は先輩の親戚、いつでも連絡は取れる。
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