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温かい湯船に浸かって、ゆっくり深呼吸をする。
湿った空気が肺の中をたぷたぷと満たす。
はぁ。と息をゆっくり吐き出すと、優しく丸みを帯びたお腹を撫でて言葉を紡ぐ。
もうすぐ産まれてくるあなた。
私の勝手で命を与えてごめんなさい。
産まれてくるという事は、生きるということ。
どんなに辛い時も、悲しい時も、あなたは生きねばなりません。
1人の人という命を産み出すこと。
それは、1人の人間の人生を作ること。
そんなことが、今私は怖くて仕方がないのです。
あなたがこの先どんな人生を送るのか、私が守り、見守り続けられるのも、きっと長い時間の内のほんの一瞬にしか過ぎないでしょう。
だから私は怖いのです。
それでも、私から産まれるたった1人のあなたに、少しでも多くの幸がありますように。
今はただ、そう願うしかないのです。
ゆらゆらと揺れる白濁色の水面。
今あなたも私のお腹の中で、ゆらゆら揺れているのかな?
産まれたら一緒にたくさんお風呂に入ろう。
狭い湯船に肩を寄せあって。
たくさん笑おう。
時には泣くかも。
だけど、一緒にぽかぽかあったまれば、きっとまた明日は笑えるから。
もうすぐ産まれてくるあなたへ。
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