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「君が鈴峰和真君だね。今までどれだけ君を探したことか。ようやく君に出会えて僕は嬉しいよ。さて、積もる話はたっぷりあるけどこんな所じゃ何だからとりあえず僕のうちに行こうか」
一息で言いながら、身長は170センチあるかどうか、体型も細身でどっちかというと華奢な部類に入るだろう男がもうすぐ180センチに届こうかという俺の肩に指を食い込ませ、信じられない力で有無を言わせぬ勢いでグイグイと引っ張る。
若干の可能性に怯えて足下を確認するも、ちゃんと二本の足が地を踏んでいた。
「痛い痛い痛い!手ぇ放せよ。てか!あんた誰だよ」
マジで肩が引きちぎられるんじゃないかと心配になって慌てて声を上げると、相手ははた、と我に返ったように指の力を抜いた。だけど決して離しはせずにこちらを振り向く。
その顔は先ほどの般若とは打って変わって哀しげで、下げたまゆ毛に大きめの瞳、小ぶりでぽってりした唇をのせた顔は女の子と見間違えそうな可愛いさである。それが全力で悲劇のヒロインばりの悲壮な雰囲気を漂わせだした。
「誰?そうだったな……初めましてだったな……」
相手の感情を底辺まで引き下げるような絶望感溢れる声音で呟いたかと思うと、再び般若の顔つきに変貌を遂げた。
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