桜の木の下で

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「私立東雲(しののめ)高校、三年B組の担任、白石 隆司(しらいしりゅうじ)だ。そう、お前の担任だよ!!新学期早々不登校で深夜徘徊とかいい度胸してんじゃねぇか!」    顔に似合わず意外と口の悪い担任に俺はあっけにとられてそのままの勢いで家まで連れていかれた。そして明け方までこんこんと説教すると、「お前は成長期なんだから寝とけ」と無理矢理先生のベッドに押し込められ、当の本人はサッサと学校へ行ってしまった。あれ?先生も徹夜だよな?  それからは毎日先生の俺への矯正攻撃が猛烈に始まったんだけど……この先生、ものすごく熱い。元祖三年B組の金◯先生なんて目じゃないぐらい、むしろ某元プロテニスプレーヤーにも引けを取らない、いや、下手すると上回るほどの熱さだ。  こりずに深夜徘徊していたら、探知機でもつけてるんじゃないかって勢いで俺を捕まえて自宅へ強制送還するし、朝は朝で登校時間に家庭訪問。親父に子育てについてしこたま文句やら助言やら格言やらを根気よく教え込み、あまりの熱心さに最初こそ軽くあしらっていた親父も俺への接し方が徐々に濃厚なものに変わっていった。  そして、進級前はあれだけ澱んで辛気臭かった教室に久しぶりに行ってみると、初夏の爽やかな空気よろしく新鮮で明るい空間へと変貌を遂げていた。     
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