桜の木の下で

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 一体何事が起きたのかと七光り軍団のボスを見ていると、先生が天使の笑顔でボスに視線を向ける度、小刻みに震えて指を噛み、体を前後に揺らす症状を引き起こすほど何かに怯えている。この謎は未だに解けない。  先生はどんな時でも全力で喜びも怒りも哀しみも楽しさも表現しては「そうだろう?!お前ら!そうじゃないのか?もっと熱くなれよ!」と言っては周りを無理矢理感情の渦へ巻き込むという芸当を持っている。  なまじ顔がいいだけにその威力は絶大で、つい乗せられる自分に後になって悔やむこともしばしばだ。    だけど、それも悪くないと思う自分もいて、今まで何事にも一線を引いて上から俯瞰するように現実を過ごしてきた俺には新鮮で、楽しくて、そうして先生の虜にもなっていった。  わざと夜に遊びに出て先生との追いかけっこを楽しんでは、時々帰りたくないと子供のように駄々をこねて先生の家に転がり込み、朝までくだらない話で盛り上がる。  学校では無意識に先生を目で追っていたし、先生の花のほころぶような笑顔を見るとその日は一日気分が浮いた。だけど他の生徒の前で先生が同じように笑っていると胸にツキンと痛みが走る。  ある時この気持ちの正体に気づき、感情を抑えようとはしたが無防備な先生を前にするとそれも難しくて、そろそろ本当に重症でやばいなー、と思う頃には卒業を迎えていた。     
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