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だけど……ガッツリ焼肉か、久しぶりに中華もいいなぁなんて呟いている先生は何だか焦っているようにも見えた。
「先生?なんか用事でもあんの?あ、彼女とか?」
だから、カマをかけてみるんだ。
「んなもん、いるわけねぇだろ。お前だって知ってんじゃねぇか。お前みたいなヤンチャな奴に僕の人生振り回されて、彼女なんてつくる暇ねぇっての」
知ってる。だって先生は……。
「大人をからかうな。やっぱり様子がおかしいぞ?熱でもあるの……か?」
そういって俺の額に伸ばしてきた手首を逆に握りしめて、くるりと位置を反転させた。勢い余った先生はニ、三歩後退して俺と桜の木に挟まれる。
「あのさ、これからもずっと先生を振り回していい?」
先生は俺の真剣な目にゴクリと息を飲み込むと俯いてしまった。
破裂しそうなほど高鳴る自分の鼓動を感じながら、耳元で囁く。
「先生、好きだ」
ビクリと体を震わせてしばし固まっていた先生。
俺は急かさずにゆっくりと先生の反応を観察する。
やがて先生は徐に顔を上げて俺の目を見据え、震える声を絞り出した。
「だから……からかうなって。お前は進学、僕は転勤で離れ離れになるし、お前はまだ若い。これからだって沢山の出会いが……んっ」
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