桜

プロローグ

「分かってるよ。今日でお別れだし、断られてもダメージ少ないよね」

　私はことごとく弱気に返した。

「そう。まっ、絶対OKだと思うけどね」

　紗奈は軽い調子で答える。

　そんなやり取りをしつつ、私は紗奈とともに教室を後にした。

　　　　　*　*　*

　桜の木の下まで来ると、織田くんはもう待っていた。紗奈はその辺で時間を潰(つぶ)してくれている。

「ごっ……、ごめん！　待たせちゃったね」

　私はしどろもどろになりながら声をかけた。

「いや、そんな待ってねえよ。どうした、いきなり呼び出して」

　織田くんはにっこり微笑んで答える。

――駄目だ、とても言い出せる気がしない。

「いや、あの……、その……」

　ただでさえ緊張して喋れないっていうのに、やっぱり告白なんて無理だ。