サクラ

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春が好きだ。 サクラが咲くから。 サクラが好きだ。 上を向けるから。 可憐で、清楚で、それでいて妖艶で。 みんなに好かれて。 孤独に(たたず)んでいても、 仲間とともに咲き乱れていても、 「美しい」「きれいだ」と賞賛される。 主張しすぎず、しかし揺るがぬ存在感で、 他の何をも引き立て役に回して。 仄暗(ほのぐら)い噂をされようと、 それすらも自身の魅力にして。 影ながらの努力は、決して見せず。 (したた)かに、軽やかに。 つぼみをつけたあの日から きっと散り往くその日まで 何度も咲いて、何度も咲くたびに、 人に囲まれ、また咲くのだろう。 春が好きだ。 君が春を好きだと笑うから。 君が好きだ。 上を向かせてくれるから。 君と過ごした幾度目の春。 サクラが笑う、君が咲く。
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