第一章

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 閉められたカーテンから光が差し込み、顔を照らす。  思わず顔を歪め、ベッドからゆっくりと足を下した。  ゆらゆらと風になびかれるカーテンに手を伸ばし、引っ張るように開けた。  シャーッ。  大きな窓から光が入り込み、思わず腕で顔を覆った。ふと顔を上げると、車から手を振る若い夫婦を見つけた。近所の加和峪さんだ。手を振り返し、にこりと微笑み返す。  さて、ここまで読んだ人は特に違和感なんて覚えなかっただろう。しかし、実はこれはマンションの十八階なのだ。  そう、これは今から何年もたった、20**年の話。近代化が発展し、車が空を飛び、光が細粒化し、空中でパソコンが使え、一家に一台自家用ロボットを持つ、といった事が日常化した世界。  そしてこの主人公、神祈野光はそんな近未来の世界に住む、平凡に暮らす高校一年生。今日もいつもと変わらない太陽を眺め、微笑んでいる。 「………今日も、世界は明るいな。」  目を細め、彼女は呟いた。
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