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 メイド喫茶で、私は佐々木君に事情を話した。もちろん、全てではなく、かいつまんでだ。彼はしばらく、考えていた様子だったが、快く条件を受け入れてくれた。  私は、彼の態度に、面食らった。彼が、条件を受け入れるはずがない、と思い込んでいたからだ。私と弟との関係を知れば、彼が怖気づいて、手を引くと思っていた。そうやって防衛線を引かなければ、後で自分が傷つくことは、目に見えていたのだ。 恋人にはなれないが、友人ではいられるギリギリのところまで、私は話していた。佐々木君に事情を話すと決めたとき、私には確かに彼との交際する意志はあった。しかし、同時に、心の底で自分の心を守っていたのだ。  私が今まで、男性と交際しても長く続かなかった理由は、朝斗にあった。弟の私に対する執着心は、常軌を逸していた。  例えば、中学生の時、私は初めて男の子と付き合った。付き合うといっても、一緒に通学して話をするだけの、可愛いものだ。手を繋ぐことさえ、しなかった。ある日、2人で下校している最中、朝斗に会った。いや、弟は私達を待ち伏せしていたのだ。恋人が根負けして逃げ出すまで、弟は泣き叫んだ。後日、私達の関係は、まるで最初から何もなかったかのように、終わった。     
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