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 高校2年生の時、家に初めて呼んだ恋人に、突然、別れを切り出されたこともある。私がトイレから部屋に帰ってくると、彼は真っ青な顔をしていた。彼が帰ったあと、朝斗を問い詰めると、弟は「姉ちゃんには、僕がふさわしい」と開き直った。  他にも挙げたら、キリがない。これらの経験から、私は悟った。朝斗がいる限り、恋人を作ることは難しい。仮に、上手く恋人になれたとしても、弟に気付かれたら、すぐにその関係は終わってしまうだろう。   私はカエルのパペットを、抱きしめた。佐々木君と交際を続けたいなら、彼との関係を朝斗に知られてはいけない。上手く行くかどうかは、分からなかった。しかし、この機会を逃せば、次は無いかもしれない。試してみる価値は、あるだろう。私は自分に、そう言い聞かせた。  「何?」  ノックもせず部屋に入ってきた朝斗を、私は起き上がって見つめた。いつから、居たのだろうか。  「姉ちゃん、今日、何かあったの?」  朝斗は、ベッドの前で仁王立ちしていた。表情は笑顔だが、目が笑っていない。 まだ、あどけなさの残る大きな瞳に、栗色の柔らかそうな前髪。一見して、日本人ではない、と分かる顔立ち。朝斗と私の祖父はスイス人で、私達はクォーターだ。     
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