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しかし、完全に日本人の外見である私とは対照的に、弟は祖父の血を色濃く受け継いでいた。そのためか、私達は姉弟と思われないことが、多かった。それが、朝斗には不満だったらしい。弟は、極端に私と特別な関係であることを望んだ。
「何も」
うっかり口を滑らせてしまわないよう、私はで出来る限り、短い言葉で答えた。
「いい香りがする。紅茶?」
朝斗の笑顔は、まさに天使のようだった。しかし、それは表面的なものに過ぎない、と長い付き合いの中で私は理解していた。
「…友達と、お茶してきたの」
朝斗は探るように、私を見た。
「本当に?」
朝斗の勘は、恐ろしいほど鋭い。特に、こういった状況では、尚更だった。
弟は、ゆっくりと私に近付いた。息がかかるくらいの所まで、顔を近付け、止まる。最終的に、私に覆いかぶさるような形になった。
「姉ちゃん、僕には嘘つかないで」
心なしか潤んだ瞳が、私を捕らえる。まるで女性が、恋人に言うような台詞だ。一体、どこで、こんなことを覚えてくるのだろうか。
朝斗は、13歳とは思えない程、人の心を動かすことに長けていた。どのように振る舞えば相手が、自分の思い通りに動くか、熟知していたのだ。それは、私も例外ではなかった。
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