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養護教諭は少しも笑わず私を見つめている。
余計なことを言っただろうか、と怖くなったがちゃんと教えてくれた。
「涼城先生は2年2組の担任ですよ」
涼城(すずしろ)、先生……
なんて、素敵な名字だろう。
爽やかでカッコよく彼にぴったりという感じがした。
私は彼の名字を知り、胸の奥が熱を持つのを感じた。
「あ、ありがとうございます」
すぐさま保健室から離れようとした私は、廊下を駆けようと右足に力を入れたが、養護教諭に「廊下はゆっくりね」と言われたため、一息吐き歩き出した。
向かう先は職員室。
さすがに2年の教室へ行く勇気はない。
職員室は一階の保健室の真反対の位置にある。
保健室が見えなくなると、私は速足で廊下を歩いた。
職員室が見えてくると、胸が大きくドキドキと音をたて始める。
歩いていても、耳に届く。
ついに職員室の前に着く。
扉は閉まっており、小さな縦長のガラス窓から中をこっそり覗いた。
しかし、あまりよく見えない。
涼城先生の存在も、もちろんわからない。
私はしばらく様子を窺ったが、勇気が出せず結局、中に入ることは出来なかった。
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