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私の通う星青高等学校は、家から自転車で通える距離にあった。
一応学校を選ぶ際に、書道部があるか確認し、どんな様子かまではちゃんとは確認せず、受験したけれど、実際入部してみると、一年は私の他にもう一人、二年は一人で三年は二人と、廃部を心配してしまうほど、少ないメンバーだ。
いいことといえば初日に顔を覚えられたこと。
中学の頃も15人程度だったが、やはり書道は人気がないのだろうか。
筆一本で様々な表現の文字を生み出すことができるというのに。
部室の前に着いたところで、「亜子ちゃん」と肩を叩かれ声をかけられた。
「水木先輩……!」
「早いね、亜子ちゃんが一番だよ」
振り返ると三年で部長の水木陸人(みずき りくと)がいた。
書道部の男子は水木先輩だけ。あとは女子だ。
それでも水木先輩は中性的な顔をしており、身長は高いものの体はひょろっと細いため、あまり男子という感じがしない。
女子の中にいても馴染んでいる感じがする。
「そうなんですね、皆さんまだなんですね?」
「うん。待ってね、鍵開けるから」
「はい」
私は部室の扉から一歩下がり、水木先輩を前にした。
タイミングがよかったみたいだ。
水木先輩が鍵を開けると、私は彼に続いて部室へ入る。
部室は教室くらいの広さがある。
だから、もっと部員が増えても大丈夫なのだ。
私はまず一番に締め切った臭いがするので、窓を開けた。
校舎の端にあるが、L字型の校舎なので校庭がよく見える。
ちょうどサッカー部が集まり始める頃だ。書道部と違い人気があり、男子のかたまりが目に入った。
するとその時部室に「失礼しまーす」と言った元気な声と共に、私と同級生の河田心美(かわた ここみ)が顔を出したので、私は視線を心美に向けた。
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