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すると水木先輩と向かい合っていたせいで彼の肘と頭がぶつかる。
「す、すみません……!」
思っていたよりも距離が近かったよう。
少し痛かったため、頭を押さえつつ謝ると、先輩が苦笑した。
「ううん。亜子ちゃん大丈夫?」
「大丈夫です、すみません……」
水木先輩を見上げると彼が私の頭をよしよしと撫でた。
「痛かったでしょ?肘に当たったね」
「いえ、先輩は大丈夫でしたか?」
「大丈夫だよ」
私は自分でも呆れるほど、おっちょこちょいなことをわかっている。
なんでもないところで転んだり、人とぶつかったりすることが多々ある。
部活中もそれは同じ。
例えば皆、新品の制服を汚さぬように袖無しのエプロンを着けるのだが、私は一人割烹着を着ている。
中学の時、墨で制服を汚したことがあるから、念のためだ。
初め、皆に笑われたが制服を汚して母に怒られるよりはよい。
そこに大河内先輩が、水木先輩の横から顔を覗かせ「先輩亜子ちゃんに優しいですよね?」と言った。
「……え?」
私は首を傾けると、水木先輩は頭から手を勢いよく離した。
「そんなことないよ……!亜子ちゃんごめんね、始めようか」
「あ、はい」
水木先輩が早口で言ったため、私も早口に答える。
変なことを言われたので、戸惑ったが筆を持つとすぐに忘れた。
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