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「ロボットが夢を見るかだって?」
いかにもホームレスが住み着いているような、廃れたこの湿っぽい場所は、発展都市である中央部から地下通路を抜けた先の狭い路地裏だ。
吹き抜ける風が微かに、アンバランスな黒髪を揺する時、ネオは片眉を上げて尋ね返した。
ネオの表情に怒りの灯火が宿った原因は、リックの軽率な質問の為であった。
「俺達人間様を差し置いて、鉄屑なんかにそんな高性能な機能がついて溜まるかよ」
明らかに不機嫌さを孕んだ声色で、どす黒い赤の液体で書かれた"機械二死ヲ!"の隣に貼られたてあった、猥褻わいせつなポスターを勢いよく叩いては、ぐしゃりと丸め潰した。
一方、当の本人は飄々とした顔で、“コックローチ”というロゴ入りの、不快なイラストの描いてあるラベルの缶詰を投げて、絶妙なタイミングで掴んだりを繰り返しているだけで、全く反省の色は見えなかった。
それがまたネオの機嫌を深く損なった。
二人の不穏な空気を前に、ルウがネオの代わりに口を開いた。
「夢か……、俺は生まれた頃から見た事がない」
「俺も。上から支給される薬を飲んでも、夢なんて見られやしねェ」
うんざりだと言う風に、ネオは首を緩く振って気だるげな身体を壁に預けた。
「あいつらロボットは、俺達から夢も居場所も奪っていきやがった」
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