22人が本棚に入れています
本棚に追加
ネオはぼうっと、宙を見つめた。暗がりではあるが、黒い電線が蛇のように壁を張っている。ここにも、最下層の暮らしというものがあるのを物語るように。
だが国や政府は対策を練らない。そもそも生身の人間よりも、この国は高性能なロボットの方を優先している。
事実として、人工知能より劣る人間は、もうこの国の発展に必要ない。結果的に、ロボットよりも能力の劣る人間達は排他されるのだ。
「あんな奴らのせいで、俺たち人間の居場所は無くなるんだ」
分かりやすい憎悪の表情を浮かべながらネオは、傍に落ちていた空き缶を荒っぽく蹴った。空き缶は小さく無機質な音を鳴らして、地面に跳ね上がると、やがて暗闇の奥へ消えていった。
「僕もネオと一緒さ。ロボットの事が憎い。だから、この反ロボット連盟に入ったんだ」
ボロボロのヘルメットを深々と被るリックの目だけが、光った。事情を知る者だけが、受け取れる視線を互いに交わしあった。
「お前達。世間話はそれ位にしておけ。休息を堪能し過ぎた。そろそろ任務を再開し、暴走を起こしているロボットを一掃するぞ」
ルウは二人に近づくと、極々穏やかに言いながら、潰れた右目ではない方で二人を見下ろした。
だが、リーダーであるネオは一向にその場を動かずに俯いていた。
「任務って言ってもなぁ」
と、小さく呟いた。
「何だ?」
ルウは、ネオを睨みつけた。
「メンバーが一人いねぇじゃねぇかよ。あいつ、ロッドはどこ行きやがったんだ?」
反抗的にネオは言った。
「それがどうした。サボりたい奴はサボればいい。俺達は俺達で任務を遂行する。ただそれだけだ」
冷めた口調で、ルウは言い返す。その態度に腹が立ったのか、ネオは己より長身の相手の襟をぐっと掴んで引き寄せた。慌てて、リックは二人の間に割って入った。
最初のコメントを投稿しよう!