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「二人共、落ち着いてよ。ネオの言い分も最もだけど、ルウの言う通りそろそろ行かないとまずい。今月でペナルティくらう事になる」
リックが幾ら言っても、二人は中々睨み合いを止めない。
「ネオ、お前は俺達のリーダーなんだ。居ない仲間の心配をして目の前の惨事を放置するか?今はあいつの事は忘れて、目前の任務遂行を果たす事を優先としろ。それに、奴のいない任務にもそろそろ慣れるんだ。うじうじするなんてお前らしくもないぞ」
「忘れられるかよ。あいつ昔はサボるような奴じゃなかっただろ。それが、あんな風に変わるなんてよ」
ネオは段々と手の力を緩めていった。か細く言葉を紡ぐ声を、ルウは目を閉じて聞いていた。確かに、覚えていた限りではネオの言葉通りの人間だった。どちらかと言えばメンバーの中では一番品行方正で、完璧主義者であった。ネオのような熱のある人間では無かったが、チームには無くてはならない存在には違いなかった。
「悪い。熱くなっちまって。お前が正しいぜ、ルウ。任務に戻ろうぜ。今ならどんな鉄屑も一握り出来そうだぜ」
落ち着きを取り戻したネオはゆっくりと襟元から手を離した。
静かに二人の論争を聞いていたリックはネオの顔を、同情して見る。ルウは、ネオの肩を叩いた。
「俺もリックも、お前の気持ちは分かっている。だが、俺たちがこの任務をやらなかったらどうなるか分かるな。抑制のきかなくなった機械共の始末をしなければこの国は終いだ。お前らしくないぞ、ネオ。今ここにいない者の事より、今この場で見える現状に目を向けろ。感情をぶつけたいのならそれからだ」
その言葉に目をネオは心臓に平手打ちを受けた気がした。そして悔やんだ顔をして額を片手で抑え、頭を冷やした。
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