138人が本棚に入れています
本棚に追加
息苦しさが消える。
私は大きく息を吸い、吐いた。
「大丈夫?」
「あ、はい。ありがとうございました」
亮介さんは気を利かせてくれたのだ。
それでも長嶺さんには申し訳ないため、心で“ごめんなさい”と伝えた。
「だいぶ長嶺酔ってるみたいだな?」
亮介さんは首を横に振りながら、苦笑する。
私は長嶺さんに視線を向けた。
長嶺さんは係長に「また来たのか?」と言われていた。
「呼ばれたから来たんですよ」と返し、頬を膨らませる長嶺さんに、係長は「まぁ飲めよ」と言って隣に座らせたため、亮介さんを嘘つき扱いされずにすんでホッとする。
「えぇ」
「俺と佐々原さんがいい感じ、に見えたって?」
亮介さんが悪戯に笑う。
私はどういうつもりで彼が、話を逆戻ししたのかわからず、恥ずかしくなった。
「長嶺さん、酔いすぎですよね……」
私の顔は真っ赤なはず。
それを誤魔化すように、グラスに手を伸ばす。
ビールを煽りたい気分だ。
「でも俺は嬉しかったよ」
「え!」
驚き、亮介さんを見つめると、彼の瞳の表情が色っぽく光っているように感じた。
「佐々原さんは?」
さらに亮介さんの瞳は細まり、私を誘うようなものに変わる。
身体がぞくぞくする。
「わ、私も……光栄です」
“嬉しい”とは言えなかったが、好意丸出しだ。
すると亮介さんは私の耳に唇を近づけた。
「あとで、二人きりで二次会しようか?」
私の胸の鼓動は跳ねあがった。
最初のコメントを投稿しよう!