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“この連絡先を削除します”
スマホ画面の問いかけに、私は一瞬躊躇った。
それでも手を伸ばす。
指先はひどく震えている。
それでも思いきって、“OK”に触れた。
“消去しました”
簡単に彼の連絡先は消えてしまう。
「消しちゃった……」
私からひどくか細い声が漏れた。
彼からもらったメッセージも、一緒に撮った写真も全部消した。
残っていたのは電話番号だけだったけれど、それすらもなくなってしまった。
亮介さんと別れてひと月半、ようやく彼を思い出にする決心がついた。
だが、これまで彼に支配されていた私の心は大きな穴があいたよう。
唯一繋がれた亮介さんの電話番号がなくなってしまったことで、息苦しいくらいの憂鬱を感じる。
無意識に涙が溢れる。
もう、どれだけ泣いたかわからない。
涙が出る度、私の心は乾いていく。
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