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触れられた手が熱い。
亮介さんの手が離れたあとも、しばらくじんじんするようだった。
「白髭なくなった?」
「は、はい」
下唇を噛み締めて、亮介さんを上目遣いに見つめる。
しかし恥ずかしくなり、すぐに目を伏せた。
すると長嶺さんが戻ってきて、私たちの間に入り「なぁに?あなたたちいい感じなの?」と言って割った。
ジョークだとわかるのに、私は彼を好きだからひどく焦る。
「そ、そんな……」
首を横に小さく振った時、亮介さんが「そうだよ」と言った。
それもお酒の席のジョークとわかる。
なのに、私の顔は赤くなる。
幸い、長嶺さんにはバレていないようで彼女は「私の佐々原ちゃんをとらないで」と、言って私の首に腕を回し抱きついた。
長嶺さんはだいぶ酔っているよう。
彼女の身体はとても熱い。
「長嶺さん、大丈夫ですか?」
私は首を後ろに回そうとするが、しがみつかれているためできない。
しかも少し息苦しい体勢だ。
だが、先輩のため言えないでいると亮介さんが「長嶺、係長が呼んでる」と小声で言った。
私から一番離れた向かい斜めに座る係長に視線を向けるが、そんな様子はない。
だが酔っている長嶺さんは「えぇ、またぁ」と言って私から手を退け、立ち上がり係長の方へ足を向けた。
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