1 線路の先

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1 線路の先

じりじりと照りつける真夏の太陽の下、僕ら甲国人捕虜を乗せた列車は、ひたすらに前進していった。昨日の朝に乗せられて以来、どれくらいの時間が経過したのかも、誰も分からなかった。 貨物を乗せるような粗末で不衛生なコンテナの中には、泥と汗と血に塗れた兵士たちが、目一杯に押し込められ、その場でしゃがみこむ隙間すらない。 車中の空気は生臭く淀み、人いきれと腐敗しかけた肉の臭いが充満し、息をしているだけで気分が悪くなった。 しかし、換気のできる窓もなければ、喉を潤す水もない。もちろん、空腹を紛らわしてくれる角砂糖もない。 破いた軍服で縛り、応急処置をしただけの右ふくらはぎの銃創は随分前に痛まなくなっていた。右足全体がじんわりと痺れているだけで、痛覚がなくなってしまったみたいだ。 確認していないので分からないが、既に壊死が始まっているのだろう。鼻が曲がりそうな腐肉の臭いの発信源は、実は僕自身なのかもしれない。 だとしたら、周りの人たちに申し訳ない。     
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