午後1時、いつもの場所で-2

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「あのもしよかったら今度、お茶でもいかがですか?」 一見爽やかそうな見た目のスーツ姿の男性に上目遣いに尋ねられ、“すみません”と左手をかざそうとした私だったが「悪いけど、俺のものなんで」と身体を引き寄せられた。 助けてほしい人は“俺”なんて言わない。 それに漂う香りはスパイシーと、彼とは違う。 「あ……彼氏、いたんですね。すみません」 男性が身体を翻した瞬間、益田君から距離を取った。 「相変わらず寿々音さんモテますね」 「……そんなことない」 男性は時々窓口に並ぶお客様だった。 今は終業後18時過ぎ。彼は私が出てくるのを待っていたのだと思う。 きっと、もう支店には来なくなるだろう。 「結婚してもモテモテで旦那さん心配でしょうね」 「そんなこと……」 「俺だったら寿々音さんが奥さんなら働かせたくないな。今さらですがどうですか?俺将来超有望ですよ?」 “家がお金持ちなだけでしょ”と口にしようとしたが「いい加減妻を口説くのやめてくれる?」と今度こそ、助けてほしい彼に抱き寄せられた。 「准君……」 「ごめん、もっと早く来ればよかった」 准君が益田君を睨む。 けれど益田君は動じる様子もなく「俺は寿々音さんを助けたんですよ」と余裕そうに笑うのだ。
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