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愛しさが伝わる。
そして、固まっていた気持ちが動くよう。
「支店長……」
支店長が“うん”というように瞳を緩やかにした。
「准さんとは真剣にお付き合いをさせていただいておりまして、先日准さんから私の両親に結婚の挨拶をしてくださいました。
私の両親は准さんとの結婚に賛成してくれまして、とても嬉しく思っております」
重なっていた手は繋がれる。
「そうかい。ご両親が賛成してくれてよかった」
「はい……。
あの私も、准さんと一緒に、温かい家庭を築いて行けたらと思っています。至らぬところも多い私ですが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします」
繋がれた手を力強くし、頭を下げた。
「こちらこそ。准をよろしくお願いするよ」
支店長の顔は優しい。
私は嬉しさと安堵から瞳の奥が熱くなった。
何を怖がっていたのだろう。
支店長の人柄はよく知っているはずだったのに……。
「父さん、僕からも……。まだまだ未熟だけど、寿々と協力し合って温かい家庭を築いていきたいと思ってる」
「あぁ」
「今度ともよろしくお願いします」
准君の言葉に涙が我慢をしきれず流れ落ちる。
彼が素早くハンカチを差し出すので、目元を隠した。
支店長とはそれから職場の話や家族の話をし、和やかに食事をすることができた。
次は赤坂さんと赤坂さんの母親と一緒に食事をすることを約束にして、支店長と別れた。
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