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“リリリリ”とうるさい目覚まし時計を准君が起きるより前に止める。
「お弁当作んなきゃ……」
小声で言ったが聞こえていないはず。
隣の彼の瞳は閉じているから。
主婦業に専念するようになってまだ一週間。
主婦になったからには料理、洗濯、掃除と完璧にしたいと思っているのに、まだ一度も弁当を作れていない。
だってその理由は……
「寿々、おはよ……」
准君に身体を後ろから覆われ、動けなくなる。
彼に抱きつかれるのは嬉しい。
けれど、今は困る。
「准君、おはよう」
私の声は“あぁ”と嘆き混じり。
今日も作れないかもしれない。
「もう起きちゃうの?」
「……だって、お弁当……」
「大丈夫、まだ時間があるから」
「でも……」
その声は彼の唇に飲まれる。
ここのところずっとこんな感じ。
仕事をしている時は気を遣っていたのだろうか。
准君が甘えたになる朝、私は彼に逆らえず許してしまうのだけれど。
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