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「あの時、思いきって話しかけてよかった」
それは私だってそう。
「私も……。あの日紙を落としてよかったって思います。あの時の准君、王子様みたいにカッコよかった」
今でも綺麗に思い出せる。
あの時はまだ彼のことが好きだったわけではないけれど、印象的だった。
「……照れくさいな」
ほんの少し彼の頬が赤色に照れを含ませる。
「カフェラテお持ちしました」
「あ、ありがとう」
沙映子が控えめに入ってきたのが照れを煽ったのか、准君がアイスティをグラス半分くらい飲み干した。
なんだか可愛らしく映る。
「ごゆっくりどうぞ」
沙映子はウインクをして離れていく。
今度は私が照れる番。
「ありがとう」という声がちょっぴり裏返る。
准君のことでとてもお世話になった沙映子。
結婚が決まった時も一番に教えたが、泣いて喜んでくれた。
恥ずかしいけれど今、仲を取り戻した私たちを見せられてよかったと思う。
「寿々」
准君が真面目な声で私を呼んだ。
「……はい」
私にもそれが移る。
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