午後1時、いつもの場所で-2

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どう答えたらいい? 准君の台詞に何を含んでいるのか読めず、迷ってしまった。 正直、働かなくていいものなら働きたくない。 けれどそれが彼の負担になってしまうのは嫌。 結婚となるとお金もいる。いつか子供もできるだろうから、貯金は多いにこしたことない。 “うん”か“ううん”でいいのに、一つの台詞に考えすぎてしまっている。 私はただ首を縮め、ぎこちなく笑ってみせた。 「僕はさ、あまり結婚にいいイメージがなくて……」 「え?」 一瞬寒気のようなものを感じた。彼は結婚しても距離をとりたいタイプなのかもしれない。“働きたい”と答えるべきだったのかもと焦る。 「ごめん、変な意味ではないんだ。いいイメージがないのは僕の両親が離婚しているからで……誤解しないで。寿々との結婚はまた全然、別」 なるほど……。 彼には悪いが少しホッとした。 「今も、そうなんですか?」 准君が小さく笑ってみせる。 それはどういう笑顔? 緊張が走る。 「詳しい離婚の原因は知らないんだ。けれど父も母も働いていて忙しそうにしていたから、すれ違っていったのかもしれないって今は思う」 質問の答えではないけれど、「そうですか」と納得してみせた。 「両親の結婚と僕たちの結婚を重ねてみているわけではないけど、僕はこれから先絶対に寿々と離れたくない」 「……准君」 「これは勝手な希望だけど……寿々が完全に家庭に入ってくれたら嬉しい」
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