第二ボタンと

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「…なんだよ、そういうことか」 学の声が聞こえた。声音からは気持ちが判断できず、恐る恐る目を開けると、いつもの笑みを学は旭へ向けていた。 「そりゃ、俺に相談できないよな」 「…気持ち悪く…ないの?」 「ん?驚いたけど、何となく合点がいったわ。それに、まぁ、今更、お前のこと気持ち悪いって思うわけないだろ?理由が分かんないのは気持ち悪ぃけど」 余りにも呆気なく旭の気持ちは、学へ受け入れられた。旭は拍子抜けをして、学をキョトンと見つめ続けた。  そして、受け入れられた想いは、更に予想もしなかった結果を産んだ。学から「付き合うか?」と言われたのだ。「さすがに、この前みたいなのは…すぐには無理だけど。俺もお前のこと嫌いじゃないし、交際前提の友達付き合い?みたいなさ」と、旭の気持ちに応えたいと言ってきた。  学の優しさに付け入っている気がしたが、断る理由は旭になかった。そして、地獄みたいな日々が、まるで以前の幸福に満ちた日々へと戻っていった。学の部活や稽古がない時に、一緒にいることが増えた。旭がこれまでのことを取り戻すかのように、映画やショッピングに誘うと、「ベタだな」と笑われたが、少し恥ずかしそうにしている学にとても嬉しくなった。暫く、以前のような友達関係が続いた。恋人らしいことはなかったが、少しでも自分のことを学が気にしてくれていることに旭は満足だった。
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