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そして、旭が高校2年生になり、2回目の夏休みになった時、あの公園のベンチで初めて手を繋いだ。触れるだけのキスを許されたのは、夏休みが終わる少し前だった。
嬉しくて仕方がなかった。まるで、常に浮いているような、ふわふわとした感覚だった。しかし、学は高校3年生になっていた。受験生だった。
夏休みで部活を引退した学は、受験勉強に励んでいた。今まで部活だった時間は、学の部屋で一緒に勉強をする時間となった。
「がっくん、どこ受験すんの?」
「んー、正直悩んでる。空手部があって、経済学部ってのは決まってるけど、どうっすかな」
「じゃあ、S大学?」
「志望校ではあるな。てか、お前もちゃんと勉強しろよ。さっきから手ェ動いてないぞ?明日、英語のミニテストなんだろ?」
「俺…英語圏には行かないから、いいし…。がっくん、見てる方が楽しい、イテッ」
「俺がやりづらいっての。来年困るんだから、今、ちゃんと勉強しとけよ?お前、俺より頭良いんだしさ」
センター試験の赤本で軽く叩かれた額を摩りながら、旭は机の上に突っ伏した。
「来年か…。また、1年会えなくなるんだね…」
「学校では、だろ?別にそれ以外なら、普通に会えるだろ」
何でもないことのようにさらりと言われて、旭は突っ伏したまま、悲しそうに眉を下げた。自分の方が相手を好きなのはどうしようもない。けれど、まるでそれをはっきり示されたみたいで、気持ちが揺れる。
「がっくん…キス、してもいい…?」
わざと甘っ垂れた声で呟く。
「っ、…」
「がっくん…」
学が、この声に弱いことを旭は最近知った。
「…したら、ちゃんと勉強しろよ?」
「うん」
机を挟んで、そっと学と口づける。このまま、幸せな時間がずっと続けばいいと、柔らかな学の唇を感じながら、旭は思った。
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