第二ボタンと

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 旭には、ショックだった。 もちろん、学の将来を決める大切な問題だから、本人の希望を一番に考えるのが大切だと分かっている。けれど、学にとっては、旭と離れることは、それほど悲しくないのだろうか。自分のように、一緒に居たいとは思ってくれていないのだろうか。 少しずつ感じていた不安が、大きくなる。 ―――やっぱり、がっくんは同情で付き合ってくれてたのか。 (がっくんは、優しいから…)  手も繋いだ。キスもした。けれど、求めるのは旭からばかりだった。好きになったのは自分からだから、それは仕方ないと思っていたし、付き合ってくれたのも奇跡だった。それでも、学も少しずつでも自分に対して恋愛感情を抱いてくれているのだと思っていたのだ。だから、学が自分と離れがたく思わないことが不安だった。 (もしかしたら…がっくんは俺から離れたいの…?) 同情で付き合ってくれているなら、今の関係を区切りのいい高校までで終わりにしたいのかもしれない。思い至った考えに、旭は愕然とし、今まで浮き足立っていた感情が一気に消えるのが分かった。    けれど、もう学に嫌われるようなことはしない。 自分の気持ちを押しつけたりしないと、旭は決めていた。 だから、不安でいっぱいであったものの、学に問い質すようなことはせず、必死に我慢した。学のために、近くの神社で合格祈願のお守りを買って、渡した。せめて、学が高校を卒業するまでは、同情でも何でもいいから、恋人としていたかった。  そして、学の受験は無事に終わり、第一希望の大学へ合格をした。お祝いもしたし、一人暮らしの部屋も一緒に探しに行った。一緒に居られる短い時間を共有しながら、卒業までのカウントダウンに、旭は一人落ち込んでいた。 そうして、とうとう恐れていた卒業式となったのだった。
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