第二ボタンと

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 勝手知ったる家のため、学は慣れた足取りで旭の部屋へ上っていく。その後ろをソワソワと落ち着きない態度で、旭は着いていった。 「え?お前、模様替えしたのかよ?全然違うじゃん。なんだ、高校デビューか?」 「べつに…高校デビューとかじゃないけど…、なんとなく…」 歯切れが悪そうに旭は呟いた。なぜなら、部屋を変えたのは、学のことを忘れたかったからだ。以前は所狭しと学と映っている写真を部屋中に置いていた。もちろん学が来た時に変に思われないようにと、主に部活や稽古の時で他の人も映っている写真にしていた。けれど、それを見るのが嫌で、今はクローゼットの奥に仕舞ってしまった。 透明なローテーブルの上に、小豆プリンと添え付けのスプーンを2個ずつ置いて、残りのプリンが入った箱を学は旭へ差し出した。 「これ、おばさんの分な?」 「う、うん。ありがとう…」 流れるような動作に、為されるがまま旭はその箱を貰うと、不意にぷっと学が笑った。 「な、何だよ?」 「てゆーかさ、お前まだその格好で寝てんのな?」 学の骨張った手が旭の頭に置かれ、最近明るい色に染めた髪をぐしゃぐしゃと乱した。 「急にこんな色にして、なんか変わったなって思ったけど、そういう格好してると中学のまんまみたいだな?」 切れ長の目が弧を描いて、旭を見やる。この顔が大好きだった。いや、大好きだ。 ドキッと胸が高鳴り、そして、痛くなった。
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