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「紺野佳奈です」
しっかり彼女と視線がぶつかる。
古風な顔立ちの彼女は笑顔が可愛らしい人だと思った。
准君の元カノかもしれないと思っている私の胸は焦りを感じている。
「会社の後輩なんだ」
「いつも兄がお世話になっております」
「こちらこそ、お世話になっております」
深々とお辞儀しあうけれど、兄の紹介でなく、准君のものが聞きたい。
准君を見つめてしまう。
私の表情は頼りないはず。
「寿々、彼女とは小学、中学、高校、大学ってずっと同じだったんだよ」
「それ、すげーな」
兄がいてよかった。
驚きの声が私を助ける。
だって心で“それだけ?”と思っているから。
「そうなんだ……」
「うん」
なるべく元気のある声で答えたけれど、私の胸のモヤモヤは准君にバレているかもしれない。
「でもすごい偶然。先輩の妹さんが准のお嫁さんだなんて、世の中狭いね」
「本当だね」
“偶然”という言葉にあまりいい思い出がない。
無意識に下唇を噛み締めてしまう。
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