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彼の瞳が色っぽく揺れる。
准君の考えていることは伝わっているから、私も瞳を緩めた。
「……またにする?」
それから首を傾げ、彼を窺う。
私も今は彼に甘えたい。
独り占めしたい気持ちでいっぱい。
「うん」
准君が彼の腕を掴む私の手の上に手を重ね、ギュッと掴んだ。
「准君」
「ん?」
「好き」
下から覗く准君の顔がわかりやすく緩む。
どうか、私をずっと好きでいて……。
私は願いを乗せて、彼の腕に自分の頬を押し付けた。
向かう先は、私たちの家。
「銀杏が色づきはじめてるね」
「あ、本当……」
季節は秋。
街路樹の銀杏は色づきはじめて、広い空には静かな雲が斜めに流れている。
彼と二人で歩いていると、先ほどの嫌な気持ちを忘れる。
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