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「寿々、准君」
それはnaturaの前を通り過ぎた時だった。
兄の凌馬がnaturaから出てきて、私たちを呼び止めた。
「お兄ちゃん!」
先月までアメリカにいた兄と会うのはひと月ぶりくらい。
「凌馬さん、お久しぶりです」
准君が私の手をそっと離し、深く頭を下げた。
私の親族に、いつも礼儀正しい彼。
そういうところも、好き。
「おぅ、久しぶり」
するとすぐ兄の後ろから「先輩、ごちそうさまでした!」と、元気な女性の声が割った。
兄の連れの女性を見て、“彼女?”と興味津々になる私の心はすぐに嫌に萎む。
なぜなら兄の連れの女性が「准!」と准君に視線を向け、親しげに呼んだから。
「え……?」
嫌なことがある日は連鎖するの?
私は准君をはっと見上げる。
「佳奈……」
准君は私の視線に気がついていない。
彼の視線は彼女真っ直ぐ。
ーー誰?
彼が呼び捨てにする女性はこれまで知らないので、“元カノ?”と胸を押さえた。
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